初めての一本を何にしようか迷っている方に向けて、私なりのアドバイスを送りたい。
伝えたいことがありすぎるのだが、できるだけミニマルに、平易な言葉で書いていく。
購入までの流れをステップ式で提案する。
大まかな要点をまとめると
①使うシーンを想定する。
②予算を決める。
③必要な機能を考える。
④気になるモデルをピックアップする。
⑤実物を見に行く。
の5ステップになる。
以下、各ステップの詳細を示していく。
STEP1. シーンの想定
どんな場面で使う時計をお考えですか?
大きく分ければオン用、オフ用、またはオンオフ兼用の3パターンだろう。
先ずは方向性の決定だ。
STEP2. お財布と相談
お金の話だが、1つ重要なことがある。
維持費用だ。買ったら終わりではない。数年に1度の分解掃除(オーバーホール:OH)が必要だ。
機械式時計は勿論、クォーツ時計もそうだ。
OHしない手もあるが、どんどん精度が悪くなり、1日に大幅な狂いが生じてストレスになる。
しかもラグジュアリーな時計ほど維持費がかかる。最初から凄く高価なモデルを狙うのは勝手だが、果たして維持できるのかを良く考えて欲しい。
新品に拘らなければ中古の選択肢もある。
過去の作品にも素晴らしい時計は沢山あるので、選択肢を広げるためにも全然アリだ。
ただし、古いモデルはブランドによって修理不可能な場合もある。
街の時計屋にOHなどを依頼する手もあるが、注意されたし。
STEP3. 機能選定
時計を動力(ムーブメント)別に分けると機械式と電池式に分かれる。
機械式には手巻きと自動巻きの2種類がある。
電池式はクォーツ時計と呼ばれる。
・手巻き式
1番手間がかかる。定期的に手動でゼンマイを巻く必要があり、怠ると時計が止まってしまう。
メリットはケースの厚みが薄くなるのと愛着が湧きやすくなる。可愛いぞ。
デメリットは手間がかかるのと選択肢が狭まることか。現在では後述する自動巻きの方が多く販売されている。
・自動巻き式
自動巻きは、装着した腕の動きでゼンマイを巻き上げることができる。着用し続けることで止まってしまうことを防げるのだ。もちろん手巻きのように手で巻き上げることもできる。
メリットは上記の通り。
デメリットは手巻きに比べてケースの厚みが増す。重さも増す。
・クォーツ式
電池式である。電池が切れない限り動き続ける。
メリットは機械式に比べて安価(モノによるが)。
あとは時間がズレにくい。OHの費用も機械式に比べると安価で済む。ケースも薄く作れる。
デメリットは修理が不可能になる場合があったり、“高い金出すのにクォーツかよ”感が否めない。
あとはデザインに関わる機能について。
大雑把にわけて2針、3針、クロノグラフ。
デイトについても記述する。
・2針
時分針のみで秒針がないもの。非常にドレッシーな印象になる。
秒針がないので、果たして時計が動いてるのか分からないことがある。
・3針
時分針と秒針で構成。
最もスタンダードなもの。
初めての一本ならコレをオススメする。
秒針が小さいスモールセコンド(画像右)というものもある。可愛い。
所謂ストップウォッチ機能がついたもの。
男心をくすぐる。カッコいいモデルが多い。
デメリットはそもそも日常生活で必要ない機能と言えるし、デカくて厚くなる、OHの費用が高くなる、等々。
オン用ならば慎重に選ぼう。ケース径が大きくないものや、IWCのポルトギーゼのようにクラシカルなデザインの物が良いだろう。
・デイト
日付表示のことである。曜日表示も付いたものはデイデイトと呼ぶ。一切無いのはノンデイト。
オン用には便利だと思うが、オフ用には不要な事が多い。しかも機械式であれば休日に着用する頃には時計も止まっていることが多いので、一々日付を合わせるのは面倒だし、仕舞いには合わせなくなる。無い方がデザインもスッキリする。
この他にもコンプリケーションと呼ばれる複雑な機能をもつ高価なモデルがあるが、最初の一本にはオススメできない。
機能については以上とする。
先ずは手巻き、自動巻き、クォーツ式の中から選ぶ。
更に2針、3針、クロノグラフのどれにするか決める。
デイトの有無はあまり拘りすぎない方が良い。ノンデイトの方が圧倒的に少ないからだ。選択肢がグッと絞られてしまう。
重要なのは、使用用途を念頭に置いて選択をしていくことだ。
STEP4. 実際に探してみる
ネットや雑誌などでお好みのモデルを探してみよう。
先ずは見た目で決めちゃって大丈夫。見た目が気に入らないと手放すことになる。
大体のブランドの公式HPでは、価格や機能の条件を絞り込んでモデルを検索することができる。代表的なブランドは、YouTubeなどで散々紹介されているので、そちらを参考にして頂きたい。特に『腕時計のある人生 Channel 』のRYさんの動画をオススメしたい。とてもわかりやすく説明されている。
ディスコンモデルを探す場合は、ヤフオクなどでブランド名を検索すると結構出てくる。気になるモデルがあれば品番をチェックして、Google検索をかけるとより詳細な情報が得られるだろう。
ディスコンに絞って特集されている雑誌もある。
現行の物より機能は劣るが、今に無いデザインの物があったりして、漁ると面白い。沼る。
中古品は保証書の有無などをチェックしよう。無いよりは有った方が絶対に良い。
永久保証を掲げているブランドもある。自社ブランドの製品ならどの年代のものでも修理を断らないというものだ。いくつかあるが、ここではIWCとジャガールクルトを挙げたい。
本当に永く使いたいのであれば、このようなブランドに絞るのも手だ。
他のブランドでは、交換部品が無くなれば公式修理が受けられない場合があることを知っておいてほしい。
STEP5. 店舗で実物を見てみよう
必ず実物に触れて試着して欲しい。
画像では分からなかった部分が良くも悪くも必ず出てくる。
都内では
・銀座の並木通り(ブティックが乱立している)
が腕時計の聖地だ。
あとは伊勢丹などの百貨店なら、多数のブランドが一度に見れる。
ネット販売で売られているモノも、可能ならば実物を見ておいた方が良い。
特に中古品は要注意。
画像では分からないキズや汚れなどがある事が多い。「非常に綺麗」とか書かれていても、そんなのは人の匙加減なので、信用しない方が良い。
試着時、特に注目して欲しいのがラグからラグの長さだ。ラグというのはケースから伸びている“脚”の部分だ。ここを含めた長さが腕からハミ出ると、凄く不恰好になる。
残念だが、そのモデルは貴方には合っていない。
店員に問題ないですよ〜なんて言われて買っても、いずれ手放すことになるだろう。
ネットや雑誌で得られる情報では、このラグからラグまでの長さは書いてないことが多い。
ケース径は理想的なのに、ラグが長くて自分の腕には合わないなんてのは結構ある。
逆にケース径は大きいのに、ラグが短いため意外とフィットするモデルもある。
パネライがそうだ。
試着する時のお作法だが、
・アクセサリー類は予め外しておく
・触るときは必ずトレイの上で
・リュウズを下にして時計を置かない
・何かしらの操作をしたい場合は許可をとる
は必ず守ろう。
実際に腕に巻くときは、店員さんにお願いすると良い。その方が無難だ。
写真を撮っても良い場合が多いので、腕に乗せた写真を撮らせてもらって、比較検討の資料にしよう。
服装は気合いを入れていく必要はないが、STEP1で想定したシーンに沿った格好が良い。
オン用なら仕事帰りにスーツで行く、オフ用なら普段の格好で行こう。
貴方の私服の系統(アメカジとかトラッドとか)によって、合う時計が変わってくる。
分からないことは店員さんに遠慮なく聞こう。
探している時計の特徴を伝えてオススメを聞くのも良い。また、OHの料金や、店によっては購入方法が多様(無金利60回払いなど)なので聞いてみると良い。
良い店員さんと出会うのも、素敵な購入経験に繋がる。接客が良かった方や、自分の好みドンピシャな時計を提案してくれた方には、是非名前を聞いておこう。名刺をくれるはずだ。店員さんのモチベも上がる(はず)。
試着だけでも全く問題ない。
他の客も見るだけ、試着だけで帰る人ばかりだ。
買う気にならなければ「検討させて頂きます。」と伝えて帰れば良い。
高い買い物だ。
焦らずじっくり吟味して、心から欲しいと思える時計と出会って欲しい。
※ ROLEXブティックへの訪問は、昨今状況が変わってきているので各自で調べて頂きたい。
最後に
腕時計は今後の人生を共にする相棒だ。
辛い時も嬉しい時も貴方の一番側にいてくれる。
最初の一本は、殊更思い入れが強くなる。
この記事が少しでも貴方の役に立ち、そして腕時計の沼に嵌った立派な病人になる手助けになればこの上ない。
※画像は全て各ブランドの公式HPから引用しました。